July 26, 2019 / 7:00 AM / 2 months ago

コラム:中露の狙いは「米同盟壊し」、領空侵犯で日韓対立煽る

[ロンドン 25日 ロイター] - ロシアの早期警戒管制機と韓国の戦闘機が相まみえた23日の事件は、無血衝突の中では最も悪意に満ちた部類のものだった。

7月25日、ロシアの早期警戒管制機と韓国の戦闘機が相まみえた23日の事件は、無血衝突の中では最も悪意に満ちた部類のものだった。写真は2017年7月、米韓合同軍事演習で日本領空を通過し、朝鮮半島に向かう戦闘機。提供写真(2019年 ロイター/Tech. Sgt. Kamaile Casillas/Pacific Air Forces/DVIDS)

韓国当局者らによると、同国が領空と主張する空域にロシアのA50早期警戒管制機が侵入し、韓国のF15戦闘機は数百発の警告射撃を行った。中国機と共に哨戒していたロシア機はこれを受けて撤退。以来、ロシアと韓国の政府は事件の真相を巡って外交上の主張を戦わせている。

この事件は複雑そうだ。日本海上空で起こったこの事件について、ロシアは自軍機が終始、公海上空にとどまっていたと主張している。

だが今回の一件で明確になったのは、米国にとっての戦略上の2大敵国が、米国の同盟国を攻撃し、分断するために協力している実態だ。

この状況について、トランプ米政権は戦略を欠いているように見えるだけではない。しばしば事態を悪化させている。

23日の事件が、偶然あの場所で起こったとは到底信じがたい。

場所は韓国と日本が共に自国の領土だと主張している韓国名「独島」、日本名「竹島」の上空で、日本と韓国の間にも外交論争を引き起こした。

しかしこの種の衝突、つまり米国の敵対国が、米軍との直接対決を避けつつ米同盟国を刺激する事例は増える一方だ。

ホルムズ海峡での英船籍タンカー拿捕を巡り、英国とイランが対峙している問題は、ある意味その好例と言えるだろう。

この地域に大規模に展開する米軍の存在を考えれば、イラン側はおそらく米船籍の民間船舶なら拿捕を踏みとどまっていただろう。しかし英船籍タンカーを拿捕したことで、イランは米船舶の拿捕と同様のプロパガンダ効果や影響力を、ずっと小さいリスクで達成できた。しかも、英領ジブラルタル当局によるイランのタンカー拿捕に対する報復と位置付けることも可能になった。

<ロシアは欧州に揺さぶり>

英ソールズベリーで昨年発生した、ロシアの元スパイに対する神経剤を用いた殺人未遂事件もまた、ロシアが米国相手には決してできないことを英国相手なら実行できることを示した例だと、一部で解釈されている。他にも事例はある。南シナ海における中国と近隣諸国との対立、そしてロシアの東欧におけるそれだ。

多くの米政府当局者らにとって、23日の事件で最も憂慮すべきはロシアと中国が一緒に行動したことだろう。

米軍がイラクでのような作戦行動よりも、大国との衝突の可能性に焦点を移した今、その種の戦争は1度に1つしか戦えない、という共通認識が出来上がっている。米国が南シナ海で中国と、バルト諸国でロシアと戦うのは可能だろう。しかし両方同時に行うには、ただでさえぐらついている軍事資源ではとても対応し切れないはずだ。

ロシアと中国の軍事協力は目新しい話ではない。昨年は南シナ海での中国海軍による巡回にロシア海軍が加わった。しかし件数は明らかに増えているようだ。

米国の同盟国はおそらく、より切実な懸念を抱いているだろう。

トランプ政権、あるいはトランプ氏の後の米政権が、自分たちを一切助けてくれなくなるのではないか、と心配を募らせているのだ。トランプ氏の数々の発言が、そうした状況を作り上げた。

<米国以外は無視>

現地人を何百万人か殺せばアフガニスタンでの戦争に簡単に勝利できただろう、という今週のトランプ大統領の発言は衝撃的だったが、単独では大きな反響は呼ばなかった。

しかしこの発言は、トランプ政権および米国がより広く発信しているものと符合する。米国以外は無視し、最も緊密な一部同盟国でさえ軽視する、というものだ。

トランプ氏は2016年の大統領選後、日本などの同盟国は自衛すべきだとの発言をおおむね控えるようになったが、そうした発言は今も広く記憶されている。20年の大統領選が白熱するにつれ、同氏が再びそうした発言を始めても驚く人はいないだろう。

北大西洋条約機構(NATO)や主要7カ国(G7)など、さまざなま場所でこうした軋轢(あつれき)が露呈している。

韓国と日本、ポーランド、そして今ではジョンソン首相率いる英国を筆頭に、一部の国々は気まぐれな米大統領を味方に付けようと苦心してきた。しかし特に欧州では、米国のコミットメントへの不安から、欧州諸国が協調し、単独でも行動できる力を強化する必要性が認識されつつある。

その方法として、欧州北部諸国による欧州合同遠征軍が挙げられる。ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、英国、ベルギー、オランダ、デンマーク、バルト3国による合同軍だ。欧州連合(EU)も独自の協調策を強化中だが、これを強力に推進しようとしたマクロン仏大統領は抵抗に遭ったているが、ホルムズ海峡での危機により、欧州独自の動きは一層強まるかもしれない。

残念ながら、米国の問題を抜きにしても欧州やアジアの米同盟国の間では分断が進んでいるようだ。23日の中国とロシアによる共同行動は、日本と韓国の対立を悪化させた。中国とロシアは共に、不和をあおる手段を他にも有している。

最も分かりやすい例は、ロシアの関与が疑われる情報漏えいや選挙介入、そして中国による近隣諸国への投資の約束だ。

オーストリアは、極右政権がロシアと近い関係にあるとの警戒が周辺国の間で高まり、共有される機密情報が減った。ロシアによるトルコへのミサイル防衛システム「S400」売却は、同盟関係の亀裂をさらに深めた。

もちろん根本的には、米国とその同盟国が抱えている国内問題の大半は、外からの干渉ではなく国内に原因がある。ロシアや中国などの独裁国家も、抱えている国内問題の多さではひけをとらない。香港の事態を見れば明らかだ。しかし状況が悪化すればするほど、こうした国々が他国を攻撃し、示威行動を強める可能性は高まりそうだ。

23日、韓国と日本が共に自国の領土だと主張する韓国名「独島」、日本名「竹島」の上空付近を飛行するロシアのA50早期警戒管制機。防衛省統合幕僚監部提供(2019年 ロイター)

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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