February 7, 2019 / 9:07 AM / a month ago

コラム:強い米経済指標に垣間見る弱さ、ドル上振れは一時的か=亀岡裕次氏

[東京 7日] - 2月に入って発表された米国の経済指標は市場が予想していた以上に強く、米金利は反発、ドル/円も一時110円台に乗せた。ただ、表面上は強さを示しながらも弱さが垣間見え、改善の持続性には疑問が残る。米経済の先行きを楽観視し、今後も米金利とドル/円が上昇傾向を維持すると考えるのは早計かもしれない。

 2月7日、大和証券・チーフ為替アナリストの亀岡裕次氏は、米国の経済指標は表面上強さを示しながらも弱さが垣間見え、改善の持続性には疑問が残ると指摘。写真は求人サインを掲げるマクドナルドの店舗。2018年4月、テキサス州オデッサで撮影(2019年 ロイター/Ann Saphir)

<フルタイムの失業率は増加>

1月米雇用統計は非農業部門の雇用者数が前月比で30万4000人増となり、16万5000人増を予想していた市場にはポジティブサプライズとなった。過去12カ月間の月平均23万4000人増、6カ月間の月平均23万2000人増、3カ月間の月平均24万1000人増を上回る水準だ。

ただ、同じ事業所調査の中にある民間雇用者の平均時給は、市場予想の前月比0.3%増に対して0.1%増にとどまった。過去にも雇用の増加が拡大した月に平均時給の伸びが鈍化したケースがある。こうした場合はパートタイム労働者の雇用拡大が影響した可能性が高い。その翌月には逆に雇用増加が鈍化する一方で、平均時給の伸びが加速することがよくある。時給の低いパートタイム労働者の雇用が鈍化した結果と読み取れる。

事業所調査と対になる家計調査は、失業者数が24万1000人増加し、失業率は前月の3.9%から4.0%へ上昇した。フルタイム労働者の失業率が3.7%から4.0%へ上昇したのに対し、パートタイム労働者の失業率は4.8%から4.2%へ低下した。一時帰休者も求職すれば失業者にカウントされるため、政府閉鎖でアルバイトを探す職員がいたことが、フルタイム労働者の失業率を悪化させた一因となった可能性がある。

転職のために職を探したり、育児などから復帰して再び就職を目指す「自発的失業者」が減少する一方で、企業側の事情で「レイオフ(一時解雇)」された非自発的失業者が増加した。また、業務縮小などを理由にフルタイム労働者をパートタイムに切り替える企業も増えた。

こうした非自発的なパートタイム就業者も失業者とカウントする広義の失業率は、前月の7.6%から8.1%へ上昇している。なお、週間新規失業保険申請件数は、1月第4週には25万3000件へと前週比5万3000件急増し、2017年9月以来の高水準となった。

広義の失業者の増加が政府機関閉鎖の影響を反映した面が大きいなら、閉鎖解除で今後失業は減るはずだ。一方、民間企業の動向を反映した面が大きいなら、雇用鈍化の兆しと言えるだろう。会社業績の理由でフルタイム就業者に比べてパートタイム就業者が増えたのであれば、今後の景気拡大を見込んだ力強い雇用状況とは言い難い。

また、政府機関閉鎖による一時帰休者は、事業所調査で政府部門の雇用者にカウントされる一方、その一部が経済的理由からアルバイトをすることで民間部門の雇用者にもダブルカウントされ、1月の非農業部門雇用者数をかさ上げした可能性もある。その場合、一時帰休が終わると、失業者数が減る要因となる一方、民間部門の雇用者数が減る要因にもなり得る。

今後も米国で高水準の雇用増が続くと楽観視することは、リスクが大きいのではないか。

<在庫は増加傾向、受注残は横ばい>

米供給管理協会(ISM)が1日発表した1月の製造業景況指数(PMI)も、市場にとってポジティブサプライズだった。2018年12月の54.3から56.6へ上昇し、市場予想の54.2を上回った。PMIを構成する5項目のうち、新規受注と生産が大幅に上昇し、在庫も小幅上昇したためだ。年初に予定されていた米国の対中関税引き上げが3月初めまで保留されたことがプラスの影響を与え、12月と比べた改善の一因になったと思われる。

しかし、在庫が増加した企業の割合が上昇したこと、さらに受注残が横ばいに近いことから、需要がさほど強くはないことがうかがえる。新規輸出受注が増加した企業の割合は低下し、引き続き海外経済の減速やドル高を背景に輸出環境が厳しいことを示した。輸出鈍化は景況感の悪化につながりやすいと言える。

5つの主要地区連銀が発表した1月製造業PMIも、12月に比べて改善したものが4つ、悪化したものが1つだったことから、ISMのPMIが改善したのも不思議ではない。一方で、シカゴ購買部協会が発表した製造業PMIは大幅に悪化した。

これら6つの指数により過去5年間のISM製造業PMIを回帰分析すると、実績値が推計誤差の上下2標準偏差のレンジに収まるケースがほとんどだが、1月の実績値はレンジを上回った。これは1月の数値が非常に強かったことを示しており、経済環境が大きく好転しない限り、2月のPMIは低下する確率が高いと言える。米製造業の景況感改善が持続的なものと楽観視するのも、リスクが大きいのではないだろうか。

<ドル/円反落に要注意>

ここまで、強い指標の中にある弱い部分を見てきたが、そもそも弱さを示した統計もある。その1つが消費者信頼感指数で、1月はミシガン大学の指数が2年3カ月ぶり、コンファレンス・ボードの指数が1年7カ月ぶりの水準まで低下した。先行きの期待指数だけでなく、現況指数も低下に転じており、消費者マインドは悪化方向にある。2018年10―12月に下落した米株価が2019年に入って反発する中でも、マインドには改善が見られていない。

消費者マインドの悪化を反映するように、米国の1月自動車販売台数は年率1670万台(季節調整済み)と、12月の1755万台から急減した。2016年以降は1670万台前後をボトムに推移してきただけに、さらに販売台数が減るようだと、個人消費が減速に転じた可能性が高まってくる。

消費関連を中心に、米経済の鈍化を示唆するこうした動きは少なくない。最大の需要項目である個人消費が減速すれば、米経済に与えるマイナス効果は大きい。住宅ローン金利が低下したことを受け、借り入れ需要には回復の兆しもあるが、景気や家計収入の見通し悪化が住宅投資を抑制することも考えられる。

予想外に強い結果を示した米国の経済統計が、2月以降は予想外のネガティブサプライズとなり、米金利とドル/円が反落するリスクには注意が必要だ。

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

亀岡裕次氏(写真は筆者提供)

*亀岡裕次氏は、大和証券の金融市場調査部部長・チーフ為替アナリスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。

(編集:久保信博)

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