November 8, 2018 / 9:25 AM / a month ago

コラム:米中間選終えリスクオン、ドルと円の同時安に=佐々木融氏

[東京 8日] - 11月6日の米中間選挙は、事前予想通り共和党が上院の過半数を維持し、民主党が下院を奪取する「ねじれ議会」となり、サプライズはなかった。

 11月8日、JPモルガン・チェース銀行の佐々木融・市場調査本部長は、ドル買い持ちポジションの巻き戻しが始まり、ドル安と円安が同時に進行する可能性があると指摘。写真は米ニュヨーク金融街にある雄牛(ブル)の像。ブルは強気相場の象徴。2018年8月に撮影。(2018年 ロイター/Brendan McDermid)

トランプ政権は、議会で法案を通過させることがこれまでより困難になるだろう。今後の経済政策は、民主党が共和党に対して、どの程度協力的な姿勢を示すかに大きく左右される。ただ、追加の税制改革など大きな政策変更はそもそも難しかったこともあり、今回の選挙結果はJPモルガンの米経済見通しに大きな影響を与えない。

しかし金融市場では、結果が明らかになると欧米の株価が上昇し、リスクセンチメントの改善を受けてドルと円がともに弱い通貨となった。とりわけ米株の堅調さが目立ち、主要株価指数は前日比2%高となった。

<過去も株高の傾向>

過去7回の中間選挙を振り返ると、実施時点から翌年3月末にかけて、米S&P500指数は過去7回中6回上昇している。上げ幅は平均10%だ。つまり、結果いかんに関わらず、米株は中間選挙後に上昇しやすい傾向にある。今回も、同様の展開になるかどうかが注目される。

一方、為替相場は今後、連邦議会がねじれ状態となったこともあり、ドルの買い持ちポジションの巻き戻しが起きる可能性がある。今週ドイツが発表した9月の鉱工業受注指数と鉱工業生産指数は、それぞれ前月比0.3%、同0.2%上昇しており、予想を上回る強さを示した。

JPモルガンのエコノミストは、ドイツの生産が第4・四半期に大きく回復すると予想している。ユーロ圏の経済指標が改善してくると、中間選挙後の米株高でリスクオンが続く中、全般的にドル買い持ちポジションの巻き戻しが始まり、ドル安と円安が同時に進行する可能性がある。クロス円は上昇が続くことが予想される。

<今後を占う3つのイベント>

こうした相場の状況に、センチメント面から影響を与え得るイベントとして注目されるのは、1)11月末の米中首脳会談、2)来年1月から始まる日米物品貿易協定(TAG)交渉、3)トランプ大統領のロシア疑惑に対する捜査の進展──だろう。最初の2つは必ずしもマイナスに働かない可能性があるとみているが、最後の1つはセッションズ司法長官が7日、唐突に辞任したことから、どちらに転ぶか現時点で予測しきれない。

まず米中関係は、中間選挙の少し前からトランプ大統領の発言のトーンが前向きにシフトした点が印象的だ。トランプ氏は1日、中国の習近平国家主席と「長く、非常に良い対話を持った」とツイッターに投稿。その後も、貿易交渉における合意の可能性を示唆する報道が続いた。

JPモルガンは米中貿易戦争の行方に必ずしも楽観的ではない。だが11月末の首脳会談に向け、トランプ大統領の前向きな発言が維持される、もしくは両国関係に目立った悪化がなければ、リスクセンチメントの改善に貢献する可能性が高いと考えている。

<為替条項に再び注目>

日米のTAGについては、12日にペンス米副大統領が来日し、12月半ばには米国が「貿易交渉の主な目標」を示す。交渉開始は来年1月半ばとなるとみられている。両国の交渉の末、協定に「為替条項」が入るかどうかが再び注目を集める可能性がある。

しかし、米国がメキシコ、カナダと結んだ新協定「USMCA」に盛り込まれた為替条項のほとんどの項目は、過去に国際通貨基金(IMF)協定や、先進7カ国(G7)、20カ国・地域(G20)の声明の中でうたわれている。また、外貨準備や為替介入実績の公表などは、日本はすでに実施済みだ。つまり為替条項の導入は、日本の為替政策や金融政策の手足を縛るようなものではない。

2016年大統領選でトランプ氏の陣営がロシアと共謀したとされるロシア疑惑の捜査に関しては、セッションズ司法長官が突然辞任したことで、大きな影響が出てくる可能性がある。セッションズ司法長官は、就任前に当時の駐米ロシア大使と接触していたにもかかわらず、その事実を議会に報告しなかったことが問題視され、ロシア疑惑の捜査担当から外れた。

代わってローゼンスタイン司法副長官がモラー特別検察官を指名し、捜査を進めてきたが、今度はウィテカー司法長官代行が統括することになる。ウィテカー氏はモラー氏のやり方に批判的であるため、これまでの捜査が打ち切りになる可能性も出てきた。

すでに複数の証言が出ていることや、民主党が中間選挙で下院を制したことから、ロシア疑惑に対する追求がこれで終わる訳ではないだろう。しかし、米国政治の行方に大きな影響が出てくることが予想される。

(本コラムは、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

(編集:久保信博)

佐々木融氏(写真は筆者提供)

 *佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。

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