September 14, 2020 / 9:23 AM / 17 days ago

コラム:菅総裁の新成長戦略、目玉は通信インフラの高度化か

[東京 14日 ロイター] - 菅義偉氏が自民党の新総裁に選出された。マーケットの注目する経済政策は、アベノミクスの継承を強調しつつ、日本経済の弱点であるデジタル化を加速し、成長戦略の中心に据える可能性が高い。だが、そのために欠かせない通信インフラ、とりわけ基幹網のぜい弱さが、新型コロナウイルスによる働き方の変化で露呈した。すでに政府主導で増強や高度化に向けて動いている節があり、16日に発足する新政権の目玉事業になる可能性がある。

 9月14日 菅義偉氏が自民党の新総裁に選出された。マーケットの注目する経済政策は、アベノミクスの継承を強調しつつ、日本経済の弱点であるデジタル化を加速し、成長戦略の中心に据える可能性が高い。写真は自民党の両院議員総会で新総裁に選出され、拍手に応える菅氏。9月14日、東京で撮影(2020年 時事通信)

<フリーズするテレ会議>

菅氏は総裁選の期間中、電子行政を一元化する「デジタル庁」構想を提案した。持論の縦割り行政打破を政策の軸にして、各省庁の既得権益をいったん白紙化し、電子行政の権限をデジタル庁に全て移行。首相官邸による省庁への「グリップ」を強化しようという狙いが見えていた。マイナンバーカードの全国民への普及は、この政策の一環と言える。

ところが、デジタル化の足元を制約している問題がある。情報量の増大に耐えうる基幹通信回線の容量だ。コロナ禍の下で、オフィスに通っていたサラリーマンが自宅でテレワークを開始。大学生の家族がモバイル授業に移行したところ、同時に作業しようとすると、画面がフリーズするケースが多発している。

オンライン会議に同時に多数が参加すると、画面が動かなくなる経験をした人も少なくないはずだ。米国に比べて動画を使ったスポーツジムの展開が日本で遅れている要因の1つに、動画が途中でフリーズするトラブルが多発する問題があるとされる。

<通信回線の高度化へ、国費投入プラン>

では、情報社会の基幹になっている回線を増強するには、どうしたらよいのか。通信会社が独自に設備投資することも考えられるが、投資回収リスクを軽減するため、設備投資期間の長期化が予想され、短期間での設備更新は難しい。そこで今、菅氏の周辺などで水面下で検討中とみられるのが、通信インフラの大整備計画だ。

昭和40年代以降の高度経済成長は、高速自動車道などの道路網の整備が進ちょくして可能になった。今後のデジタル化社会で不可欠なインフラは、高度で大容量の通信インフラであり、その整備に国費を投入し、潜在成長率の引き上げの原動力にしようという構想である。

デジタル庁構想自体には、民需の直接的な拡大効果が乏しいとの指摘があるが、通信インフラの整備には、1兆円単位の費用が必要であり、財政投融資の資金を含めて公的な資金を投入すれば、短期的な需要喚起も見込め、中長期的には経済効率の引き上げも想定できる「成長戦略」の1つと言える。

<実現可能な新しい社会>

大容量の通信インフラを全国に整備できれば、今回のコロナ禍で表面化しようとしている社会構造の変動をプラス面に生かすことが可能になる。

1つ目は、在宅勤務の先にある田園都市への移住と勤務の両立だ。地価が安いので都心部より広い住居面積を確保でき、自然環境も優れているだろう。明治維新から150年あまり、東京への集中を続けてきた日本の社会が、地方へのシフトを始めるきっかけになりそうな転機が訪れようとしている。

2つ目は、IT技術を駆使した農業の展開が一段と加速できる点だ。今でも無人化による稲作が実験的に行われているが、今後は付加価値の高い園芸作物などでAI(人工知能)を駆使した取り組みが可能になるのではないか。養殖などの水産業でも、同じような展開が期待される。

3つ目は、コロナの感染被害を抑制するために始まった大学のリモート授業をさらに高度化させ、少人数のゼミ式と同じ効果の出る新しい教育パターンの開発だ。日本の大学が克服できない「マスプロ」化した授業からの脱却が、通信インフラの高度化で可能になる。

このように通信インフラの高度化は、その先に国民ひとりひとりの所得引き上げを可能にする新しい「果実」をもたらすことができる。

米国では1990年代、当時のゴア副大統領が全国に高速・大容量通信網を張り巡らす「情報スーパーハイウェイ構想」を進めた。それが米国がデジタル社会に移行するのを支えた。

16日に新首相となることが確実視されている菅氏には、国民に希望をもたらす「新しい社会」の姿をぜひ、語ってほしいと願っている。

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編集:久保信博

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