November 20, 2020 / 7:39 AM / 9 days ago

コラム:ブレイナード新財務長官なら円高加速か、菅首相の対応に注目

[東京 20日 ロイター] - 外為市場では、静かに円高が進行している。その背景には次期米大統領への就任が確実視されているバイデン前副大統領のマクロ政策への思惑があるが、短期的には新しい財務長官の指名次第で円高のテンポが加速する可能性がある。トリガーを引きそうなのがブレイナード米連邦準備理事会(FRB)理事だ。ドル安論者が登場した場合、為替に関心の高い菅義偉首相がどのような対応を示すのかにも注目が集まりそうだ。

11月20日、外為市場では、静かに円高が進行している。写真は2017年3月、ハーバード・ケネディスクールで講演するブレイナード氏(2020年 ロイター/Brian Snyder)

<ドル安論者のブレイナード氏>

バイデン氏は19日、次期財務長官候補を選定し、26日の感謝祭の前後に発表することを明らかにした。記者会見で、次期財務長官の人選について「われわれは決定した。民主党の進歩派から穏健派まであらゆる層に受け入れられる人物であることが分かるだろう」と述べた。

有力候補には、ブレイナード氏、イエレン前FRB議長、ラスキン元FRB理事、アトランタ地区連銀のボスティック総裁らの名前が挙がっている。

もし、ブレイナード氏が指名された場合、マーケットはかなり明確に反応するのではないか。2016年9月12日の講演で、同理事は14年6月から16年1月までのドル高は、200bpの利上げ効果に相当したと発言。「ドル安論者」としてのイメージを強めた。また、国際金融に詳しい複数の関係者によれば、米財務次官当時は為替介入に極めて否定的な見解を持っていたという。

同理事はハト派のFRBボードメンバーとして知られ、連邦政府の拡大する財政支出は、FRBが量的緩和の一環として米国債を購入することで財源を賄えるとの意見に賛同しているとみられる。

<短期的に円高のシナリオ>

米上院の最終議席は確定していないが、すでに100議席中50議席を獲得した共和党が、バイデン氏の進める財政拡張を押しとどめる機能を果たし、短期的には当初の想定よりも米財政赤字が抑制される可能性がある。

その反射的効果として、新型コロナウイルス感染の再拡大で経済が停滞しかねない米経済の回復力は、相対的に弱まるだろう。これを予期してマーケットはFRBの超緩和策の長期化や量的緩和の強化を予想。米長期金利US10YT=RRは低水準で推移し、場合によっては一段の低下もありうる。

その結果、ドル/円JPY=EBSは短期的に円高方向の圧力をジワジワと受け続けるだろう。そこに「ブレイナード効果」が加われば、年内のどこかの時点で100円近辺まで円高が進む可能性も否定できないと予想する。

<為替に敏感な菅首相>

一方、菅首相は歴代の首相の中で最も為替問題に「敏感」と言われている。財務省・日銀・金融庁の幹部をメンバーとする「三者会合」を円高進展時に開催させ、とりあえず「口先介入」でドル売りの勢いを止めにかかるだろう。

ただ、米国が政権交代の移行期にあり、日本政府によるドル買い/円売りの実弾介入の調整窓口がどこになるのか不明という特殊事情もあり、口先介入の効果が限られる展開も予想される。

また、10月末から一時は3000円超の上昇となった日経平均.N225に代表される株高進行の中で、100円台の為替レートに「びくびく」するのは、過剰な反応という見方もマクロ政策の専門家の一部から出ている。菅政権が円高進行に対し、どのように対応するのか、ラグビーの試合におけるファーストスクラムの組み方を見るように、じっくりと観察する必要がある。

<ドル安招きやすいバイデン氏のマクロ政策>

一方で、バイデン新政権のマクロ政策が財政拡張と金融緩和維持のミックスであるなら、中長期的にはドルのじり安を放置する可能性がある。また、米民主党の主要な支持基盤である労働者の利益を守るため、ドル安を容認して米企業の利益と雇用を守る政策スタンスを明確にする展開もありうる。

このケースでは、FRBが現在の超金融緩和政策を転換するまで、ドル安基調が続きやすくなり、円高圧力の長期化を招くと予想される。

無風が続いた2020年の外為市場から、「波乱相場」の21年に転換する公算が大きくなっている。

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編集:石田仁志

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