December 16, 2018 / 11:02 PM / 22 days ago

コラム:2019年経済展望、何でもありの「ブラックスワン」

[ロンドン 13日] - 投資家が今後12カ月の政策や政治リスクを点検し、自分の戦略や投資計画を狂わせかねない、実のところ予測不能なイベントを見通そうとする時期が再びやってきた。

12月13日、投資家が今後12カ月の政策や政治リスクを点検し、自分の戦略や投資計画を狂わせかねない、実のところ予測不能なイベントを見通そうとする時期が再びやってきた。ロンドンのセントジェームズ・パークで羽を休めるブラックスワン。2013年10月撮影(2018年 ロイター/Luke MacGregor)

そして2019年は、可能性は低いが影響大な「ブラックスワン(想定外の出来事)」から、多少は予測可能でも影響も大きい「グレースワン」まで、いかなる可能性も排除することはできない年になりそうだ。

トランプ米大統領の弾劾。英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)取りやめと残留。トランプ大統領による、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長解任。ドイツのリセッション(景気後退)入り。米中貿易戦争の解決と市場急騰。原油価格1バレル=20ドルへの暴落。

これらはすべて可能性は低いが、もし実際に起きれば世界市場に甚大な影響を与えるだろう。だが現在、世界各国の政治が過熱状況にあることや、経済や市場のサイクルの成熟度を考えれば、実は「何でもあり」なのだ。

ブレグジットを例にとろう。もし英国のEU離脱が遅れたり、延期されたり、ずるずると何年も先延ばしになったり、または完全に撤回されたりするとしたら、英ポンドはどうなるだろうか。大幅に上昇する可能性が高い。

ブレグジットの是非を問う国民投票が行われた2016年6月23日の夜、ポンドは1.50ドルの手前で推移していた。その年は、10月に1度「フラッシュ・クラッシュ」が起きたのを除くと、1.20ドルまで下落した。今週再び、1.25ドル以下まで下げている。

ブレグジットは、依然としてポンドの重石となっている。そして、離脱が遅れたり、どうにかして英国がEUに残留したりすることになった場合、ポンドは簡単に1.40ドルを上回ってしまうだろう。そして、両ケース、または国民投票のやり直しが行われる可能性は、高まっている。

ブレグジット撤回や「ソフト」なブレグジットは、イングランド銀行(英中銀)に利上げを検討させる可能性がある。そうなれば、投機筋の間で積み上がっている相当規模のショートポジションが跳ね返るだろう。

その他の国の金融政策はどうなるだろうか。

トランプ大統領は、FRBを「狂っている」だの「ばかげている」だのと呼び、パウエル議長を笑いものにしている。もしパウエル氏のFRBが来年も金融政策の引き締めを続けた場合、トランプ氏が最終的に同氏を解任することはあり得るのだろうか。

それも、まったく奇想天外な話ではない。FRBの利上げがひとたび過多になれば、長短金利のイールドカーブの逆転が起き、経済がリセッション入りして株式市場が暴落する。激怒したトランプ氏は行動に出るだろう。

そうなれば、投資家は不安になり、市場全体で不確実性とボラティリティーが高まって、「安全資産」としての米国債に需要が押し寄せ、利回りは一層下がってイールドカーブの逆転幅はより大きくなるだろう。

米国債の2年物と10年物の利回り格差は先週、逆転までわずか10ベーシスポイント以下に迫った。過去50年の間、逆イールドは景気後退の前兆となっている。今回は、そうならない可能性が十分にあるが、そのこと自体が投資家にとって「グレースワン」だろう。

米国の景気後退局面入りは、来年は想定されていない。来るとすれば、2020年になるだろう。だが来年の景気減速はあり得る。そしてそれは、特にドイツやユーロ圏も減速した場合には、原油価格を1バレル=20ドルまで引き下げるのに十分だろう。

欧州中央銀行(ECB)は3年に及ぶ2兆6000億ユーロ(約335兆円)規模の量的緩和(QE)政策を終了し、金利は少なくとも来夏にかけて現在の記録的な低水準を維持するが、利上げの軌道は堅持している。だが、もし深刻な減速が起きれば、それは難しい。

その場合は、フランクフルトの印刷局が再びフル回転することになる。だが、出資比率の調整やQEのルールがあるため、ECBが買い増すことができる国債はなくなりつつある。それでも、ドラギ総裁の指揮の下、ECBはほとんど前例のない柔軟性と意志をもって未知の領域に踏み出してきた。

米国と欧州の経済減速は、原油にとって良くない。今年初め、原油価格が1バレル=100ドルに迫るのではないかとの説が出たことを覚えているだろうか。2カ月もたたないうちに30%も急落し、この説にはまったく信頼するに足りないということが明らかになった。現在、北海ブレント原油は1バレル=60ドル程度で、100ドルと20ドルの中間の位置にある。米国産標準油種(WTI)は現在、1バレル=50ドルの水準にある。

厳密にいうと、原油は極めてもろく、20ドルになる確率の方が急なリバウンドの確率よりも高い。根本的に、現在世界では原油供給は飽和状態にあると、野村のアナリストは指摘している。そしてわずか3年前には、原油は13年で最低レベルの1バレル=20ドルで取引されていた。

銀行やブローカー、トレーダーや投資家が、来年についてあまたの予測を出している。深刻なものもあれば、それほどでもないものもある。以下に、サクソ・バンクと野村、HSBCがそれぞれまとめた「ブラックスワン、グレースワン」予測を要約した。ポジティブなものもネガティブなものもあり、統一見解には程遠いが、いずれも2019年の市場に大きなパンチを見舞う可能性がある事柄だ。

●野村

ショック1:ポピュリズムの終焉

ショック2:原油価格が1バレル=20ドルに下落

ショック3:市場の激震

ショック4:イタリアの再生

ショック5:新興国市場のデフレーション

ショック6:中国人民元の回復

ショック7:世界が成長軌道に乗る

ショック8:ユーロ圏のデフレーション

ショック9:インフレーションの衝撃波

●HSBC

<リスクイベント>

ユーロ圏の新たな危機

貿易摩擦の終息

気候変動の影響

<バリュエーションへのリスク>

米企業の収益率低下

新興国市場の改革サプライズ

ECBが型破りな新政策開始

<流動性とボラティリティーのリスク>

レバレッジのリスクと会計術

FRBの利上げ継続

債券の売り出しに買い手がつかない

確定利付債のボラティリティーが再燃

●サクソ・バンク

1. EUが「デット・ジュビリー(債務帳消し)」を宣言

2. アップルが、1株520ドルで電気自動車大手テスラを買収する「原資確保」

3. トランプ大統領がパウエル議長に「クビだ」と告げる

4. (英野党・労働党の)コービン氏が英首相になり、英ポンドと米ドルが等価になる

5. 企業への貸し渋りにより、米動画配信大手ネットフリックスが米ゼネラル・エレクトリック(GE)と同じ道を歩む

6. オーストラリアの住宅バブルが崩壊し、豪中銀が量的緩和策に乗り出す

7. ドイツがリセッション入り

8. 大規模な太陽フレアで混乱が生じ、2兆ドル規模の損害が出る

9. 気候変動を巡るパニックが広がり、世界的な交通税が導入される

10. 国際通貨基金(IMF)と世銀が、国内総生産(GDP)の計算をやめ、代わって生産性に注目する方針表明

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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