August 23, 2019 / 11:34 AM / a month ago

日韓GSOMIA破棄、元統合幕僚長の岩崎氏「日本は是是非非で臨むべき」


*20:26JST 日韓GSOMIA破棄、元統合幕僚長の岩崎氏「日本は是是非非で臨むべき」

韓国政府は8月22日、国家安全保障会議(NSC)の常任委員会を開き、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めた。23日にも日本へ通告され、11月22日に失効することになる。同協定は日本と韓国の間で軍事秘密情報を提供し合う際、第三国への漏洩を防止するために締結される。同協定が破棄されることで、両国間の軍事秘密情報の交換が難しくなる。

韓国政府は今回の決定に際して、日本政府が韓国に対して安保上の友好国である「ホワイト国(正式名称:グループA)」としての指定を取り消したことを理由に挙げている。具体的には、韓国に対する半導体材料の輸出管理を厳しくすると日本政府が7月1日に発表した内容がそれにあたろう。半導体の製造に必要な「フッ化ポリイミド」「レジスト」「フッ化水素」について、日本から韓国への輸出するごとに許可・審査を受けることが必要になる。韓国の輸出に占める半導体の割合は非常に高く、半導体業界が躓くことによるダメージは大きい。このため、韓国政府はこれまで踏み込んだことのない安保分野でのカードを切ったということになる。経済分野で苦戦の続く韓国の文在寅政権にとって、北朝鮮との融和、反日への姿勢を明確に打ち出すことで、政権への支持率維持を狙ったとも想定できる。

これに対するアメリカの反応は厳しい。アメリカは相次いで政府高官を韓国に派遣、同協定の継続を念押ししてきたとみられるが、それを振り切った格好となった。アメリカ国防省、国務省からは、韓国に対する「強い懸念」「失望」が表明された。アメリカが同盟国に対して、強い失望を表明することは極めて異例な状況となる。

実際には日韓GSOMIAが失効しても、日本には韓国と同盟しているアメリカ経由で情報が入ってくるため、基本的には安全保障に大きな影響はないとの見方も紹介されているが、事はそう簡単でない。自衛隊元統合幕僚長の岩崎氏に日韓GSOMIA、韓国との関係、第三国(米国)の介入などについて話を聞いた。

■岩崎氏のコメント
GSOMIA(軍事情報包括保護協定)とは当該国同士の軍事的な秘密情報の相互交換に関する協定の事である。この協定により、例えば、北朝鮮が発射する弾道弾等のミサイル関連情報を比較的短時間で入手できることは事実であり、貴重な手段である。他方、この協定を結ぶことによる当該国間の軍事的な信頼感の高さを表す指標とも言えるものである。したがって、日韓GSOMIAは地域の安全保障にとって重要な協定である。日韓GSOMIAが破棄となれば日本は、アメリカとの更なる連携強化を図りつつ、地域の安定と安全を図ることになるのだろう。

今回の日韓GSOMIA協定破棄は、日韓関係を更に悪化させるものの、日本は是是非非で臨むべきと考えている。これまでの様に過剰に相手を慮って妥協すれば、また次回も同じような事が再発する事は必至であろう。一方で対話の門戸は常にオープンにしておくべきで、決して感情論に流されるべきでない。

なお、日韓の関係悪化は周辺国や同盟国に多大な影響を与えていることは事実であるが、この問題はあくまでも日韓の問題であり、基本的に両者が解決すべき問題である。アメリカは我が国とも韓国とも同盟国であるものの、私はアメリカは日韓の今回の問題に直接関与すべきではないと考えている。どちらかに、あるいは双方に強い不満が残り、その後に影響を与える可能性があるからである。ただし、安全保障に関する件(GSOMIA等)についてはより強い関与があってもよかったのではと思っている(今回のアメリカの介入はどの程度かは計り知れないが、仮に強い介入があったとしても韓国のあの感情的な行動を抑制できたかどうかは疑問であるが)。

日韓両国、周辺国とも不安定を望んではいない筈である。ましてや紛争等を望む筈がない。ただし、歴史の多くが物語っているように、感情のもつれや誤解から戦争となったことを忘れてはいけない。

また、日韓の争いは第三国(特に中露)にとっては日米韓の連携弱体化を狙う千載一遇のチャンスと映るかもしれない。7月23日には日本海で中露共同演習が行われていたが、その際にロシアのA50警戒管制機が竹島の領空を2回にわたり領空侵犯をする事象が発生した。この事は日韓の関係悪化に起因したか否か定かではないものの、このような事には細心の注意が必要である。


岩崎茂(いわさき・しげる)
1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。



《TN》

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