March 8, 2019 / 5:41 AM / in 4 months

インタビュー:物価2%の勢い低下、日銀は追加緩和模索へ=山口元日銀副総裁

[東京 8日 ロイター] - 元日銀副総裁の山口広秀・日興リサーチセンター理事長は、ロイターとのインタビューに応じ、日本経済が減速する下で、日銀が掲げる物価2%目標に向けたモメンタム(勢い)は低下してきているとし、金融政策運営は「追加緩和を模索する方向にならざるを得ない」との見解を示した。

 3月8日、元日銀副総裁の山口広秀・日興リサーチセンター理事長は、ロイターとのインタビューに応じ、金融政策運営は「追加緩和を模索する方向にならざるを得ない」との見解を示した。写真は路上でゴミ箱の中を見る男性。東京・銀座で2015年2月に撮影(2019年 ロイター/Yuya Shino)

大規模な金融緩和の長期化によって副作用に対する懸念が強まる中、金融政策の適切な遂行と金融システムの安定確保は「車の両輪」と述べ、効果と副作用を検証しながら漸進的に金融政策を進めていく重要性を強調した。インタビューは7日に行った。

詳細は以下の通り。

--日本の経済・物価見通しについて。

「内需は、個人消費も設備投資も緩やかに回復している。一方、輸出はこのところ頭打ち感がはっきりと出ている。輸出が下を向くと経済全体の足が引っ張られがちであり、現状の景気は全体として減速している」

「先行きは海外経済の動向に依存するが、輸出の下振れが大きくなれば、企業の収益・マインドの悪化を通じて設備投資にブレーキがかかり、経済の減速度合いが強まる可能性がある。景気後退のリスクも小さいとはいえない」

「物価については、需給ギャップの動きが影響して、下押し圧力が働くとみている。消費者物価の前年比上昇率はじりじりと低下していく方向だろう」

--先行きの日銀の金融政策運営をどうみるか。

「目標の2%の物価上昇率に向けたモメンタムは、むしろ少しずつ低下してきており、日銀としては追加緩和を模索する方向にならざるを得ない。ただ、使える手立てはかなり限られており、小さな変化に直ちに対応するというよりは、大きく景気が減速し、物価上昇のモメンタムもかなり低下したときに、何らかの手を打つことになるのではないか」

--追加緩和の手段は。

「より長いタイムスパンで考えれば、金融政策の正常化が大きな課題だ。追加緩和といっても、長い目で考えた正常化のプロセスと極力矛盾しない政策は何かを考える必要がある。すでに日銀のバランスシートは相当に大きくなっており、バランスシートにできるだけ負担をかけない政策手法を見出していくことになるのではないか」

「資産買い入れは、緩和の枠組みの中でも、削減できるものがあれば、削減してもいい。一方、金利の追加的引き下げの可能性が、全くないわけではないだろう」

--正常化のプロセスと求められるコミュニケーションは。

「FRB(米連邦準備理事会)は、非常に早い段階から出口の議論を開始した。これによって市場に無用の混乱を与えずに、出口に向けて動き出すことができた。日銀も、市場が当面の緩和継続を想定しているような状況においてこそ、出口ないし正常化の方法論を議論し、市場に提示していくことが必要だと思う」

--大規模緩和長期化の金融システムへの影響は。

「金融政策の適切な遂行と金融システムの安定確保は、日銀にとって車の両輪だ。金融政策の運営に当たっては、金融システムや金融機関経営の健全性を確保していくことを、同時にしっかりと考えていかなければならない」

--金融機関は、どのように対応していくべきか。

「現在の金融緩和を続けるだけでも、金融機関収益面には厳しいインパクトが及ぶ。特に地域金融機関への影響は大きい。こうした状況を克服するために、金融機関同士の合従連衡を模索していくことも必要になるかもしれない」

--物価2%目標の位置づけをどのように考えていくべきか。

「長い目でみて2%目標を維持しながらも、先行き消費者物価が前年比プラスの領域で動いていくと判断できる状況になれば、政策の方向を(現在の緩和から引き締め的に)変えるといった対応があってもいい。2%目標をひたすら厳格に追及する必要はないとの議論も、一時よりは強まっているように思う。日銀として柔軟に考えてもいいのではないか」

--黒田東彦日銀総裁の下での異次元緩和の評価と課題。

「それまでデフレを克服することができなかった環境の中で黒田総裁が登場し、大胆な緩和政策に踏み切ったことは、全く理解できないわけではない。ただ、2%目標は実現できないまま6年がたとうとしている」

「大胆な緩和の結果、国債市場の機能が低下し、株式市場のゆがみも指摘されている。金融機関の収益基盤も毀損(きそん)されるなど副作用が蓄積している。この6年間の政策についてポジティブな評価はしにくい」

--金融政策運営における白川方明前総裁との大きな違いは何か。

「効果を明確には読めない政策については、漸進的に進めるというのがそれまでの政策運営だった。効果と副作用がはっきりしなくとも、必要であれば大胆に進めていくのが黒田総裁のスタンスだと思う」

「しかし、そうした大胆な政策には、実験的な要素が必ずある。事前に予測できない効果と副作用を検証し、GRADUAL(漸進的)に進めていくことが大事だ。GRADUALに進めることで極端な政策に陥らずに済むし、いつでも方向転換ができる。こうした政策運営が基本だ」

--中銀の独立性は、どのように変化したか。

「(この6年間は)政府の経済政策との連携がかなり意識されていたようにみえる。もう少し独立性を大事にしたほうがよかったと思う。厳しい財政状況と限られた金融政策発動余地の中で、今後、追加緩和や出口ということになると、これまで以上に財政政策と金融政策の連携を意識せざるを得なくなるのではないか」

*内容を追加しました。

伊藤純夫 木原麗花 編集:田巻一彦

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