April 2, 2019 / 5:32 AM / 4 months ago

インタビュー:SDGsとリターンが両立する運用必要=池谷・信託協会長

[東京 2日 ロイター] - 信託協会の池谷幹男会長(三菱UFJ信託銀行社長)は、ロイターとのインタビューで、SDGs(持続可能な開発目標)と投資リターンを両立させる運用の仕組みが必要との考えを示した。

 4月2日、信託協会の池谷幹男会長(三菱UFJ信託銀行社長)は、ロイターとのインタビューで、SDGs(持続可能な開発目標)と投資リターンを両立させる運用の仕組みが必要との考えを示した。写真は日銀本店前で2017年9月に撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)

運用ビジネスでは、持続可能な社会を投資を通じて作り上げる動きが活発になっているが、池谷会長は、企業のSDGsの取り組みと投資リターンが両立するケースは必ずしも多いわけではないとして、「リターンとSDGsとをどのように両立させるのかが課題になっている。運用者の責任として、きちんとリターンを上げる仕組みを作り上げていくことが大事だ」と述べた。

また、今後の日本の運用ビジネスでは国際分散投資の能力を身に付けることが重要との認識を示した。

池谷氏は、4月2日に会長に就任した。

主なやり取りは以下の通り。

――日銀のマイナス金利の副作用についてどのように受け止めているか。

「信託銀行という顧客財産を運用する立場としては非常に厳しい状況だ。日本の公社債市場の動向を表す代表的な指数の年度のリターンも、かろうじてプラスの水準に留まっている。一方で、企業も予定利率を引き下げ、その分掛け金を積む努力をしてきているが、それでも予定利率は2%程度と高水準で退職給付債務にも影響している」

「かつては金利をベースに株式やオルタナティブなどのリスク資産を加えることで、全体のリターンを引き上げるのが運用の大原則だった。今ではそうした教科書的な運用でリターンを得ることは難しい。確定拠出年金を選ぶ人が増えているものの、確定給付年金において、会社が老後の年金支給をしっかり担うということに対する従業員の安心感は引き続き根強く残っている。運用面で厳しい局面が続いている」

――伝統的な運用が厳しくなる中で、どのような運用努力をしているのか。

「日本の運用ビジネスは遅れているという指摘もあるが、現在の金融環境で、この10年程度は、分散投資など相関性の低さを追求してリターンの源泉を求める努力を相当に積み重ねている。国内にはなかなか見当たらないので、海外のプロダクトに対する取り組みも進めてきた。不動産やインフラ、プライベート・エクイティ、保険など相当に商品プロダクトの組み合わせのバリエーションは増加している。イノベーションの工夫を続けている」

――金融庁も日本の資産運用ビジネスの高度化を求めているが何が必要か。

「ファンド・マネジャーやアナリストの運用能力の向上に尽きる。そのためにどのようなアプローチがいいのか各社考えている。大手金融グループに中には、運用機能を1つに集めて一元化の取り組みをしているところもあるし、一方でわれわれは豪州の資産運用会社を買収した。この買収により、グローバルな運用プラットフォームの基礎を作ろうとしている」

「国内は今後、円債で4―5%を稼げるような時代は来ないだろう。グローバルに分散投資をするしかない。グローバルなプロダクトを自分でコーディネイトし、判断できる能力が必要だ。1800兆円の個人金融資産が本格的に資産形成に向かう際に、国際分散投資は不可欠だ」

――日本の運用会社がグローバルな運用できるのか。

「今、日本の運用会社が募集している投信商品を見ても、表面をペロッと1枚はがすと裏側は外資系運用会社の商品であることがほとんどだ。こんなことをずっと続けるのか。日本の国富である1800兆円は、われわれがしっかりと運用責任をもたなければならない。そのために自らで分散投資する能力を身に着ける必要がある」

――スチュワードシップ活動の課題は何か。

「単に財務に関する中長期的なストーリに関してのみの企業とのやり取りだけではなくて、広い意味でのSDGs(持続可能な開発目標)がテーマになっている。われわれは2006年に国連の責任投資原則に署名し、これまでにSRI(社会的責任投資)ファンドも作った。その中で、投資リターンとSDGsとをどのように両立させるのかが課題になっている。運用者の責任として、きちんとリターンを上げる仕組みを作り上げていくことが大事だ。受益者責任を負っており、そのリターンに対しての責任を持っているので、(年金基金など)スポンサーに対する明確な説明が問われる」

「エンゲージメント(企業との対話)の課題としては、今後、ESGなどの非財務情報に関する対話を、運用会社としてどのように評価するのかが問われる。ESGの取り組みデータをリターンに結び付けて、どのような傾向があるのかを探っていく。そういう意味で今後は、エンゲージメントの位置付けがますます重要になるだろう」

布施太郎 編集:石田仁志

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