June 25, 2019 / 12:55 AM / a month ago

焦点:ルノー不信募る日産、新体制が抱える妥協人事のリスク

[横浜市 25日 ロイター] - 日産自動車(7201.T)の統治改革での人事を巡る仏ルノー(RENA.PA)との対立は双方の妥協で表向きは解消したが、ルノーの揺さぶりは日産社内に大きな禍根を残した。とりわけルノーのジャンドミニク・スナール会長の変心に日産幹部らは不信感を強めた。経営統合を進めたいルノーと独立性を維持したい日産との攻防はこれからが本番。両社間の緊張はかつてない高まりを見せている。

 6月25日、日産自動車の統治改革での人事を巡る仏ルノーとの対立は双方の妥協で表向きは解消したが、ルノーの揺さぶりは日産社内に大きな禍根を残した。とりわけルノーのジャンドミニク・スナール会長(写真)の変心に日産幹部らは不信感を強めた。3月に横浜で撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung Hoon)

<スナール会長への不信感>

「とにかくがっかり。彼の信用はガタ落ちだ」――。日産関係者は、紳士的だと思っていたルノーのスナール会長の突然の心変わりに怒りと落胆を隠さなかった。

日産が目指す「指名委員会等設置会社」への移行に必要な定款変更の議案は5月14・15日に開いた取締役会で全会一致で決まり、スナール会長も賛同したはずだった。

にもかかわらず、同会長は日産の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)に書簡を送付し、移行に伴い新設する委員会の人事に納得できないとして、25日の日産株主総会における議案採決で「棄権」する意向を示した。同関係者は「なぜ今さら反対を言い出すのか」といぶかった。

この書簡は、欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモビルズ(FCA)(FCHA.MI)がルノーとの経営統合案を撤回した6月6日の翌日の7日付。FCAとの統合案で、肝心の提携相手である日産の支持を得られず、ルノーの筆頭株主であるフランス政府に「待った」をかけられたスナール会長の「焦りのあらわれでは」と複数の日産関係者がみている。

<失われた信頼>

両社の交渉に詳しい別の関係者も「ルノーは最初から日産の人事案を受け入れたほうがよかった。交渉に1週間近く費やされ、明らかに両社間の信頼は損なわれた」と株主総会前のルノーの行動を批判した。

日産は指名委員会等設置会社への移行後に指名・監査・報酬の3つの委員会を新設する。日産は当初、ルノーからはスナール会長のみを委員に入れる計画だったが、ルノーは3つの委員会すべてに委員ポストを求めてきた。ただ、日産はルノーの要望に応じてティエリー・ボロレCEOも迎える妥協案を提示。この結果、スナール会長は指名委員会のメンバーに、ボロレCEOは監査委員会のメンバーに入ることとなった。

統治改革に伴う定款変更議案の成立には、議決権を行使できる過半の株主の出席と、出席株主の3分の2以上の賛成が必要。日産に約43%を出資する筆頭株主のルノーが「棄権」すれば、議案成立は極めて難しい情勢だったが、ルノーが日産の修正人事案を受け入れ「賛成」に転じたことで、25日の株主総会では日産の提案する議案が可決され、統治改革を予定通りに進めることができる見通しだ。

<利益相反事案、ルノー出身取締役は決議参加せず>

日産の指名委員会等設置会社への移行は、外部有識者による「ガバナンス改善特別委員会(以下、特別委)」の提言を受けて実施する。カルロス・ゴーン前会長の不正事件を受け、日産が前会長に権限が集中していた統治体制を改める必要があると判断し、特別委に統治改革案の策定を依頼した。

特別委の提言では、独立した社外取締役を、報酬委員会の委員は「全員」とし、指名と監査の両委員会の委員は「過半数」(指名委は全員がより望ましい)としている。

また、日産の主要株主で取締役などの役職経験者が「監査委員会の委員に就任することは望ましくない」とも提言している。ボロレCEOの起用はこの提言にやや抵触する譲歩を強いられた。

一方、両社の交渉に詳しい関係者によると、日産の取締役会でルノーと利益相反の恐れがある事案を扱う場合は、ルノー出身の取締役は決議に参加しないことを両社は合意しているという。紆余曲折はあったものの、最終的には「両社にとって喜ばしい、良い合意になった」と同関係者はみている。

取締役選任11人の議案では、西川社長の経営責任を問う株主の声も多く、米議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)とグラスルイスも西川社長の再任には反対を推奨した。

ルノー側も「日産に配慮した経営統合案に反対する西川社長の続投は不条理だ」(ルノー関係者)としてぎりぎりまで不満をみせていたが、最終的に取締役会で全会一致で続投が決まり、株主総会でも承認される見通しだ。

提携関係を約20年続ける日産とルノーはすでに事業上の結びつきが強く「別れる」選択肢は両社とも想定していない。日産への影響力を維持し続けたいルノー。ルノーへの出資が15%に過ぎず議決権もないため、対等な資本関係に見直したい日産。今回の人事を巡る攻防で溝が深まった両社は再び歩み寄れるのか。新体制下でも両社の神経戦は続きそうだ。

白木真紀、Linda Sieg 取材協力:田実直美 編集:田巻一彦

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