April 7, 2020 / 7:11 AM / 2 months ago

コラム:3Mのマスク騒動、グローバリズム変容の前兆か

[ニューヨーク 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 経済のグローバル化は、発展途上国での中間層の創出から先進国での物価抑制に至るさまざまな素晴らしい功績をもたらしたが、世界規模の感染症流行をやり過ごすには、まだ、役不足なようだ。米複合企業スリーエム(3M)(MMM.N)が巻き込まれたマスク供給騒動は、自由貿易システムの限界を浮き彫りにした。新型コロナウイルスの今回の危機が終息した局面では、もっと頑丈な仕組みの構築が必要になるだろう。

4月6日、経済のグローバル化は、発展途上国での中間層の創出から先進国での物価抑制に至るさまざまな素晴らしい功績をもたらしたが、世界規模の感染症流行をやり過ごすには、まだ、役不足なようだ。写真は3M社のマスク。ミネソタ州メープルウッドの同社ラボで3月撮影(2020年 ロイター/Nicholas Pfosi)

トランプ米大統領は3Mのマスク供給問題で、カナダや中南米より米国内を優先しろと荒っぽい要求を突き付けた。3Mは抵抗し、誰もがそうした行動をすれば、最終的に皆が困ることになると指摘した。全くその通りだ。特に長い目で見れば──。

米国は医薬品、特にワクチンでは輸入超だ。既に似たような取り合いはドミノ倒し的に起きている。

健康医療問題の危機時に「自国第一主義」が台頭するのは、今回が初めてではない。2009年の新型インフルエンザ流行では、カナダとオーストラリアが国内のワクチン生産者に自国向け優先を求めた。その30年前、カナダでは、米国企業に発注したインフルエンザワクチンが届かず、ワクチン不足に陥る事態が起きていた。

企業は株主を第一に考えるものだし、政府も自国の有権者に対してそう考える。製品が人の生死を左右するものであれば、貿易はとどのつまり、ぶんどり合戦のようなゲームになりかねない。

問題は、そうしたゲームでは敗者のほうが多いことだ。とりわけ敗者になりやすいのは米企業だ。

リフィニティブのデータによると、売上高の海外比率が50%を超える3Mは、資本利益率が20%近くに達する。S&P総合500種.SPX構成企業の平均は15%前後だ。しかし、最も安く生産できる国で作り、最善の価格を提示する国で売るという方法は、困難な状況が生じた際も、外国からの供給に頼れると顧客が思う場合にだけに通用する。トランプ氏はそうした計算式をひっくり返した。

生死を左右する製品でなければ、現状のグローバル化もそこそこ機能できるだろう。そもそも、市場は忘れっぽい。米国は1980年に経済制裁のため対ソ食糧輸出制限を実施し、当時は、米国への信頼性が何年も損なわれると多方面から批判された。

しかし、制裁のダメージは結局、長くは続かなかった。経済にとって「自給自足」は必然のものではないのだ。

しかし、そうした経済ナショナリズムはたぶん、さらにはびこる。それが意味するのは、自由貿易は基本的に無敵だと考えてきたグローバル企業にとって、利益の低減と、資本の苦痛に満ちた再配分ということになろう。

●背景となるニュース

*米複合企業スリーエム(3M)は新型コロナとの闘いを支援するため、米顧客向け防護マスクを増産すると発表した。ただ、外国へのマスク供給が禁じられれば人道上の問題が生じると警告した。

*3Mの3日の発表によると、トランプ大統領は米国産マスクのカナダと中南米諸国への輸出を中止するよう3Mに求めた。トランプ氏は2日、ツイッターに3Mは「高い代償を払うことになる」と投稿したが、理由は説明しなかった。

*3Mは5日、中国工場からドイツの警察向けに出荷される途中の同社製品が米当局に差し押さえられた、との報道を否定した。

*インドは新型コロナの検査キットの輸出を減らした。医薬品や人工呼吸器、マスク、防護製品の一部については既に輸出を禁止している。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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