October 16, 2020 / 12:05 AM / 6 days ago

コラム:米大統領選、両候補とも経済政策はナンセンス

[ボルティモア 13日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ローマ教皇(法王)フランシスコはこのごろ、米ケーブルテレビのニュースをよく見ているに違いない。回勅「フラテッリ・トゥッティ」に最近こう記しているからだ。

10月13日、ローマ教皇(法王)フランシスコはこのごろ、米ケーブルテレビのニュースをよく見ているに違いない。写真は9月、オハイオ州クリーブランドで行われた大統領候補討論会で討論するトランプ米大統領(左)とバイデン前副大統領(2020年 ロイター/Brian Snyder)

「政治活動はもはや、健全な議論とは無関係になってしまった。人々の暮らしと公益を向上させる長期計画を議論するのではなく、相手の評判を落とすことを主目的とした口先のマーケティング技術に過ぎなくなった」

同じことは、米大統領選の両候補の経済計画にそっくり当てはまる。トランプ大統領とバイデン前副大統領が示す計画はいずれも似たり寄ったりのナンセンスで、その種類が違うだけだ。

トランプ氏が示しているのは主に、教皇言うところの「誇張、過激主義、二極分化」だ。彼の選挙戦ウェブサイトはおおむね、自身の大統領1期目の経済政策についての自慢と、ほぼ同じ政策を続けるという約束で埋め尽くされている。政策リストには、所得・資産格差の縮小を狙いとしない減税、移民制限、反中国の貿易政策、環境面の規制緩和などが含まれる。

トランプ氏支持者は納得するかもしれないが、これらの政策の効果は実証されていない。所得格差が小さい方が雇用は増え、成長は強化される。移民は長らく米国の経済成長の要だった。自由貿易はほぼ常に富裕国を潤しており、恩恵の程度は少なくとも貧しい国々と同等だ。環境汚染を抑えれば、表向きの国内総生産(GDP)には表れない実質的な利益がもたらされる。

これと比べると、バイデン陣営の文面はもっと良識的に映る。トランプ陣営のサイトが消費者向け商品について満足感を演出する広告のようだとすれば、バイデン陣営のそれは、あまり想像力に恵まれない政治シンクタンクが執筆したような感じだ。

文章は官僚的で空疎。「コミュニティーの健康問題を解決すれば健康の向上につながり得る。人々がより独立して暮らせるようになり、予防と介護の協調を重視することを通じ、介護の課題が緩和される」

医療従事者への助成や手当てに関する詳細な記述もあるが、退屈な内容だ。

バイデン陣営の文章は、新たな政府プログラムを導入すれば既存政策から財源がはがされる、という事実を一切認めていない。医療従事者や小さい子供のいる家庭への支給を増やすことは、他の良い政策の財源が減ることを意味する。バイデン氏はそのことを知っているはずだが、票を失うことを恐れているのだ。

大統領選の陣営にそうした厳しい現実を示せと求めるのはお門違いなのかもしれない。とはいえ毒舌混じりの非難合戦と化した2020年大統領選は、経済の現実からとりわけ分離しているように見える。特に重要な2つの格差について考えてみよう。

第1は、コロナ禍後の経済だ。経済活動の厳しい制限による医学的効果のほどについては議論されているが、既に経済と教育に及んでいる甚大な打撃についてはほとんど話題に上らない。

制限措置が解除され、パンデミックの恐れが無くなれば政府の仕事は終わり、というわけではない。経済の迅速かつ本格的な回復には、個人消費に対する追加的な大規模支援が必要になる。企業と家計の債務負担軽減や、新規採用や再雇用を行う雇用主への助成も効果があるだろう。

トランプ氏は先週、間違った方向に大きな一歩を踏み出した。追加経済対策についての議会との交渉を打ち切ると発表したのだ。その後撤回したが、協議の遅れと不透明性によって打撃は増した。

バイデン氏はさまざまな支援策を約束しているが、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長が先週暗に示唆した「できることは何でもやる」財政アプローチとはまだほど遠い。バイデン氏はまた、少しの追加的な予防措置を講じれば学校を安全に再開できるという、欧州と米国の一部で示されている強力なエビデンスを無視している。

そして産業政策だ。両候補とも、自分は米国経済の将来像を持っていると主張している。しかし2人とも統合的思考を十分に行っていないようだ。問題は自由市場主義の行き過ぎではない。平凡なビジネスマンであるトランプ氏は縁故資本主義と、関税や割り当てなど政府の伝統的な統制手段に満足しているようだ。バイデン氏は「大きな政府」という自らの思想的ルーツに忠実に、政府が指揮を執るやり方を理論的に支持している。

しかしトランプ氏は一貫した政策よりもジェスチャーを好む上、不公平貿易よりも生産性向上の方が製造業の雇用を破壊しているのを理解していないようだ。バイデン氏は単に、知的な反応の仕方が間違っているように見える。人生の大半を労働組合との対話に費やしてきたのだから無理もない。ハイテク産業や非政府系サービス業を代表する労働組合はほとんど存在しない。

トランプ、バイデン両氏の経済論争は、辛辣なだけでなくほぼ後ろ向きだが、2人とも財政赤字による経済への影響を重視していないことには期待が持てる。双方とも財政収支均衡の利点について一定のリップサービスは行っているが、民主、共和両党はいずれも事実上、現代貨幣理論(MMT)の基本理念を受け入れている。つまり財政赤字への恐れではなく、経済の現実に即して財政支出を行うべきだ、という理念だ。トランプ、バイデン両氏がけんかをやめ、現実が要求することをもっと真剣に考えてくれればよいのだが。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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