October 15, 2020 / 9:20 AM / 7 days ago

コラム:市場はいかにして「民主党完勝」を愛するようになったか

[ロンドン 14日 ロイター] - 11月3日の米国大統領選挙に向けた市場のコンセンサスとして、今年に入って一貫していたのは、ほぼ「結果をめぐって市場に混乱が生じるだろう」という点だけだった。だが、投票日まで3週間となった今、そのコンセンサスもひっくり返りつつある。

10月14日、11月3日の米国大統領選挙に向けた市場のコンセンサスとして、今年に入って一貫していたのは、ほぼ「結果をめぐって市場に混乱が生じるだろう」という点だけだった。ニューヨーク証券取引所前で9月撮影(2020年 ロイター/Andrew Kelly)

この数カ月、投資家がもっぱら気を揉んでいたのは、選挙結果が僅差になり、紛議が生じることだった。10月、バンク・オブ・アメリカ(BAC.N)がグローバル規模のファンドマネジャーを対象に行った調査では、まだ回答者の60%が選挙結果をめぐる訴訟が起きると予想していた。また、選挙結果が大半の市場に混乱を招く可能性が高いという回答も4分の3に及んだ。

だが、世論調査では挑戦者である民主党ジョー・バイデン候補が5月以降一貫してリードを保ち、投票日に向けてその差が広がるなかで、ブックメーカー(賭け業者)のあいだでは、民主党が大統領選挙でも上下両院でも完勝するという予想が広がり、オッズが低下しつつある。

投資銀行や資産運用会社はここ何十年もの間、市場が増税路線を拒絶しており、政府の過剰な支出を抑えるよう、与野党が拮抗する議会を好んでいる、との考えを示してきた。しかし、彼らも今となっては、財政支出を拡大し富裕税・法人税を引き上げると予想される民主党が完勝する可能性を前向きに受け入れつつある。

投票日まで1カ月を切って、米国株式市場は記録的な高水準にあり、ベンチマークとなるS&P500種株価指数のインプライドボラティリティ(予想変動率)を示す「恐怖指数」VIX、そして11月・12月のVIX先物契約は、6週間ぶりの低水準に沈みつつある。

世論調査における現職トランプ大統領に対するバイデン候補のリードは10ポイントを超えており、9月時点の約2倍に広がった。欧州のブックメーカー各社は7対4の確率でトランプ氏が敗北する可能性があると見ており、これは選挙戦が始まって以来、最も不利なオッズである。またアリゾナ、フロリダ、ミシガン、ノースカロライナ、ペンシルバニア、ウィスコンシンといった主要な激戦州でも民主党が勝つ公算が高いと見られている。

オンライン市場プレディクトイットでは、バイデン氏当選の可能性を66%、民主党が上下両院を含め完勝する可能性を59%としている。

<民主党の完勝は市場の上昇要因に>

だが、投資業界は恐怖に駆られるどころか、こうした予測をすべて呑み込んでいるように見える。バンク・オブ・アメリカの投資フローストラテジストは9日、「興味深いことに、『ブルーウェイブ』、つまり民主党完勝という選挙結果は市場の下落要因であるというコンセンサスがあったのに、ここ数カ月で上昇要因に変化している」と述べた。

モルガンスタンレーのクロスアセット戦略責任者アンドリュー・シーツ氏は、「完勝の可能性が高まるほど、選挙結果の確定が長引く可能性が低下する」と言葉を添える。

またJPモルガンのストラテジスト、ジョン・ノーマンド氏は、「『ブルーウェイブ』の結果、米国が新たに相当規模の景気刺激策を打つという見方に立てば、投資家は、昨今の『財政の崖』やホワイトハウスの滑稽な動き、さらには選挙結果をめぐる揉めごとの先を見通すことができるだろう」とも説明する。

ノーマンド氏はさらに、「国内でもグローバルな規模でも5月頃には景気拡大が始まったが、8月以来その勢いは失われ、今は深刻な停滞のリスクがある。簡単に言えば、民主党が完勝すれば、その景気拡大が復活するということだ」と言葉を添える。「規制政策の行方や法人税増税が利益率に与える影響、ひそかに進む脱グローバル化についてどう考えるかはさておき、今後12カ月間でもっと重要なのは前倒しの景気刺激策ということになるだろう」

<変動要因はすでに織り込み済み>

すると、ここから選挙情勢に大逆転がない限り、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)と選挙という双子の不確実性があるにもかかわらず、市場の「インプライドボラティリティ(予想変動率)」はすでに固まっている可能性がある。もちろん、ブレグジットや年末にかけての金融・経済へのストレスに対する慢性化した密かな不安は、ここでは考慮外だ。

VIXはヘッジングのためのツールとして使われているせいで誇張されていると想定しても、9月末の時点でVIXが30前後だったということは、その後1カ月間の市場変動が1日あたり1─2%程度であることを意味している。言い換えれば、すでに変動要因のかなりの部分が価格に織り込み済みなのだ。

ここ1週間でVIXは8月以来最低の24まで下がったというのは、さらなる落ち着きを感じさせる。

11月・12月分のVIX先物契約VXX0 VXZ0は28とかなりのプレミアムを維持しているとはいえ、それでも民主党勝利の可能性が高まった8月末以降で最低の水準である。

為替市場のボラティリティ指数.DBCVIXも、やはり7月以降で最低の水準まで落ちている。逆方向を示しているのは、大型の財政出動を受けてイールドカーブが急になる影響が価格に反映される債券市場のボラティリティだけである。

識者のなかには、トランプ氏の場当たり的な意思決定スタイルや「ツイッター政治」の終焉が予想されることも今後のボラティリティが低下する理由になっている、との指摘もある。

主にメディアで言及される政策懸念に応じて変動する「世界経済政策不確実性指数」は、パンデミックの展開に合わせて記録的な高水準まで上昇したが、これもやはり低下しており、9月には2019年8月を下回る水準に戻った。

<「異常な経済環境」の終わりが早まる>

とはいえ、今年のパンデミックによる影響と選挙の結果がもたらす大きな安心材料を切り分けることは難しい。

トランプ氏の言動は相対的に予想しにくい。しかし、COVID-19(新型コロナ感染症)が広がる以前、同氏在任期間中に株価のボラティリティがその前の4年間に比べて多少なりとも高かったとする証拠はほとんどない。パンデミック直前の為替ボラティリティは2016年の半分であり、債券市場のボラティリティも低下していた。

最近のVIXと乖離した動きを見せているのが、テクノロジー銘柄中心のナスダックにおけるインプライドボラティリティ.VXNである。同市場では、この16年間で最大級のボラティリティ・プレミアムが何度か生じている。民主党政権下での規制強化への懸念なのか、上昇継続を見込んだオプションの利用が拡大しているのかは意見が別れるところだ。選挙とパンデミックが過去のものになったときに大きな変動があるという見方もある。

「バイデン氏の勝利は、巨大テクノロジー銘柄からマネーがシフトする契機になるかもしれない。だがそれは必ずしも規制強化への懸念が理由ではない」と前出のシーツ氏は言う。景気刺激策とワクチンの登場によりイールドカーブが急になり、巨大テクノロジー企業にとって不釣り合いなまでに有利だった「異常な経済環境」の終焉が早まるだろう、というのが同氏の見立てだ。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

(翻訳:エァクレーレン)

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